藤本先生「生野林業」を知る

日本は海外の様々と比較して自然が豊かな国の一つとして知られています。
国土面積に占める森林面積は約7割にも及び、人工林はそのうちの約4割が人工林です。

人工林とは人の手によって木を植林し、育成した森林のことで、

日常生活の中で必要となる木材を供給するためには不可欠な存在となっています。


日本の林業については中学校や高等学校で学んだ人も多いハズ…。

日本における木材自給率の問題や放置林の問題を聞いた人も居ると思います。


林業というと建材用に植林された杉と檜を想像する人が多いかもしれませんが、

実際には様々な用途で木材は使われてきましたし、地域によって樹種も様々です。


また、同じ杉と檜であったとしても、地域によって様々な特色があって、

歴史的、文化的、あるいは、政策的な背景によって地域性が色濃く反映されます。


実は、銀山で有名な朝来市の生野の林業にもそうした地域色がはっきりと現れています。


…ということで、今回は生野町森林組合にお邪魔し、

桑田組合長から生野林業についてお話を伺ってきました。



生野林業の特徴を一言で言い表すならば…

「銀山と歩んできた林業」…でしょうか?


森林組合を訪問する前から銀山との関わりは想像していましたが、

その関わり方は私の想像とは少し違ったところがありました。


日本の近代化を支えた生野銀山に掘り進められた坑道の総延長は約350Kmで、

16世紀の半ばごろから本格的に銀山開発が進められてきました。


鉱山での採掘作業は非常に危険なもので、常に落盤の危険性がありました。

そのため、それぞれの時代ごとにその危険性を少しでも低減させる工夫がありました。


江戸時代には主に杉や檜の丸太が落盤を防ぐために利用され、

その頃から木材の安定供給のために植林も行われていたそうです。


長い歴史の中で様々な樹種の植林が試行されてきたそうで、

一時期には松の植林が盛んだったころもあるようです。


生野は兵庫県の中でも全体的に標高が高いということもあり、

県内の他の地域と比較しても冷涼な気候となっています。


林業においても気候は大きく関係していて、

寒冷地の樹種との相性が良いそうです。


生野という地域を考える上で「冷涼な土地」というのは重要なポイントのようです。

(このポイントは生野工業団地のジャパンパウダーの話にも出てきました。)


さて、少し話がそれてしまいましたが、

結果的に生野銀山の坑道を支柱に使われた樹種は杉と檜。


一般的な建材用は40〜80年ものの木材が主流と言われていますが、

鉱山で利用されていたのは20年程度の「細い丸太」だったようです。


銀山を支えるための林業が発達したために、建材として発展しにくかったわけです。

この生野林業の特徴は生野の住宅建築にも多少の影響があったのかもしれません。


生野銀山は明治に入って官営鉱山となり、お雇い外国人が技術者が呼ばれましたが、

その際には日本人向けの官舎「生野鉱山職員宿舎」も一緒に作られました。


ここで面白かったのが、その官舎の住宅建材。

桑田さんの話によると、建材の「質」は悪かったとのこと…。


あくまで、想像の話ですが、住宅に適した木材の確保が難しかったのかもしれません。


さて、そんな林業の特色を持つ生野の林業ですが、

ブランド木材が全く存在しない…というわけではないようです。


良質の天然杉が伐採できる地域もあり、近隣の神崎郡市川町の笠形山の杉は

姫路城の昭和の大改修でも利用されたそうです。


とは言え、現在はいわゆる「良質」の定義が大きく揺らぎつつあって、

文化財の修復用途を除いては、木材のブランド化は非常に難しいようです。


木材は育成に非常に長い年月をかけることになりますが、

「流行」は非常に速いスピードで変化します。


例えば、「無骨な漁師風」が流行ると、節の多い木材が突発的に売れたりしますが、

その流行を予期して木を育成することは限りなく不可能に近いわけです。


しかも、近年は集成材と呼ばれる木質材料が登場したことで、

益々、建材用としての木の価値が揺らぎつつあります。


そうした中で脚光を浴びているのがバイオマス発電なのですが…

その話については次のテーマに譲ることにしたいと思います。


今回の生野町森林組合では本当に多くの話を伺うことができました。

林業への女性の参入の可能性、森林組合の仕組みなど、書き足りません…。


林業の話は今後も継続的に取り上げていく予定にしているので、

ここに書ききれなかった話も小出しにしていければ…と考えています。


生野町森林組合の皆さんには最後まで非常に丁寧にご対応頂きました。

本当にありがとうございました‼




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