藤本先生「但馬牛」を知る

但馬という土地は食材に恵まれた土地です。
海に行けば海の幸、山に行けば山の幸が豊富にあります。

特に自分で料理するのが大好きな人にとっては、
色々な料理をリーズナブルに楽しむことができると思います。

そんな但馬を代表する食材といえば…「但馬牛(たじまうし)」!!
ということで、今回は新温泉町の「但馬中井畜産」で話を聞いてきました。





但馬牛はブランドとしては十分には知られていないかもしれませんが、
「神戸ビーフ」と聞けば多くの人はピンと来ると思います。

そもそも、「神戸ビーフ」は幕末に来日した外国人がその美味しさに感動し
名付けたとされていますが、その牛肉こそが但馬牛だったのです。

ちなみに、現在の「神戸ビーフ」ブランドとされているのは、
特に上質な但馬牛(肉質等級4等級以上)が厳選されたものです。

歴史的には平安時代には優良な牛として知られていたようで、
主として農耕牛として重宝されていたそうです。

農業の機械化が進んだ近代以降も、農家では牛を一頭飼いして、
子牛を繁殖させて秋頃に市場で子牛を売るというサイクルが続いていました。





肉牛が市場に出るまでは、繁殖⇒肥育⇒精肉、という手順を踏みますが、
伝統的には一頭飼いで繁殖段階で子牛を売りに出していたのです。

但馬牛は現在でも非常に価値が高い牛として知られているわけですが、
その価値の高さには様々な理由があります。

まずは、早期から血統管理が行われ、純血が維持されてきたことです。

国産の黒毛和種は様々な地域間で交配し続けてきましたが、
但馬牛は県外の牛を交配しない唯一の牛です。

そのため、遺伝的にも他県の牛とは離れており、
同じ地域内でより品質の高い肉牛が管理され続けてきました。

その一方で、牛としては弱く、肥育に時間と手間がかかります。
肥育期間も一般的な牛が30ヶ月であるのに対して、42ヶ月かかるそうです。

但馬牛は病気に弱く、体温が少しでも上がると、餌を食べなくなるそうです。
また、大きさについても、他県の牛に比べると70%程度だそうです。

そうした但馬牛の性質は、肥育農家にとっては非常にリスクが高く、
他の地域では、他の牛も入れてリスクを低減している地域もあるようです。

しかし、そのことがかえってブランド価値を高めることになったようです。
ブランド化に不可欠な「ストーリー」があるわけです。





さて、そんな但馬牛ですが、最近では但馬の地で精肉まで行い、
「但馬ビーフ」として、販売するブランド戦略が進められています。

これまでは、但馬牛を繁殖させ、他の地域の肥育農家に売る…
まさに、肉牛界の「BtoB」ビジネスで成立していました。

しかしながら、近年では農家の高齢化が進んだことで、
生産効率が高い繁殖肥育一貫経営が行われるようになりました。

また、六次産業化も進んで、精肉して販売もするようになり、
小売店では「但馬ビーフ」として店頭に並び始めています。

ブランド合戦となると「但馬ビーフ」は不利にも見えますが、
「BtoB」で培った底力は他の地域にはない力だと言えます。

むしろ、六次産業に大きく傾いてしまうと、他に子牛を出せなくなり、
結果として、「BtoB」産業としての地位を失う可能性もあります。

もちろん、六次産業化を行い、広くPRすることは不可欠ですが、
全体的なバランスをとりながら産業構造を再構築することも重要なのかもしれません。

さて…ここまで但馬牛について色々と説明してきましたが、
コロナ禍の影響は無かったのでしょうか?

実は、子牛の値段は高騰と暴落が非常に激しく、想像以上に不安定です。
特に気になるのは、東京オリンピックの開催延期の問題です。

様々な食材が大きな消費を見込んで買い集められましたが、
結果として、買い集められた食材が行き場を失いました。

その一方で、特に但馬牛のように肉体的に弱い牛は、
可能な限り、期間内に手放して現金化する必要が出てきます。

もちろん、影響が無かったわけでは無かったそうですが、
繁殖農家よりも、肥育農家の方に影響があったようです。

とはいえ、お話を伺った中井畜産では非常に力強い言葉を聞きました。

”畜産業は度々、危機的な状況と向き合うことになる。
前回はBSE問題があった。でも、耐えきった。耐えるノウハウもある。”

BSE問題というは「狂牛病」とも呼ばれ、
2000年代に世界的な話題となりました。

日本では食の安全性に関するが盛り上がり、
牛肉に対する恐怖心が肉牛市場に大打撃を与えました。

その当時に20歳ごろだった人たち…つまり、
私同世代の人たちにとって、畜産業はまさに「鬼門」だったようです。

実際に、但馬で畜産に関わる30〜40代の人は殆ど不在で、
現在では、世代を空けて20代が主力となりつつあります。

若い世代が伝統的な但馬牛ビジネス牽引していくのか、
今後も目が離せませんし、可能であれば応援したいと感じました。



JAの直営店「たじまんま」で買った「但馬ビーフ」…
自宅でも美味しく頂きました。

今回も地元の方から本当に面白いお話を聞かせて頂きました。
また一つ、但馬について知ることができました。





お話を伺った但馬中井畜産の中井崇泰さんからは、
本当に多くの学びを頂き、まさに、目から鱗が…の連続でした。

改めて、感謝したいと思います。
本当にありがとうございました。

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