藤本先生「JPCM兵庫工場」を知る

 車や鉄道の車窓から工場が集まっているような場所を見たことはありますか?
もしかすると、その場所は「工業団地」と呼ばれる場所かもしれません。

工業団地とは、一定の区画の土地を計画的に整備し、
工業化の促進を進めるための場所のことです。

工業団地といっても、規模や用途、目的は様々で、特定産業を集積させることもあります。
また、立地場所によっても内陸型、臨海型、臨空型と呼ばれるものもあります。

自治体によっては、企業誘致の骨格的な事業として考えるところも少なくありません。
そのため、国や自治体も様々な支援制度を準備しています。

税制面での優遇、立地奨励金、雇用促進奨励金…国、県、市町村の補助も充実しています。
そんな工業団地ですが、もちろん、但馬地域にも複数存在しています。

…ということで、今回は但馬の工業団地についてお話したいと思います。

但馬地域の工業団地といっても各地に点在しているのですが、
今回訪問したのは朝来市の生野工業団地でした。

生野と聞くと最初に思い浮かぶのが「生野銀山」です。
平安時代に発見されて以来、日本の近代化を支えてきました。



明治時代には生野銀山と播磨灘を結ぶ近代技術を駆使した幹線道が引かれるなど、
日本における陸上輸送の近代化という点でも興味深い場所です。

そんな歴史的な背景を持つ生野に工場を持つのが、
今回、訪問した「ジャパンパウダー塗料(JPCM)兵庫工場」でした。

実は、塗料というのは非常に重要かつ興味深い産業で、
私自身、以前から興味があった分野でした。

ほとんど反射しない黒色塗料、用途ごとに使える彩色レフ…
デジタル・アーカイブで使える機材に関わる技術です。

さて…そんな私の熱い思いは置いておいて…
まずは、JPCMの兵庫工場について紹介したいと思います。

この工場は、久保孝ペイントの子会社「メプコ」として1987年に操業を開始し、
2015年に大日本塗料と久保孝ペイントが粉体塗料に特化した合弁会社として設立しました。

現在は大日本塗料のグループ企業の一つとして創業しています。

塗料と聞くと、どうしてもペンキのような液体状を思い浮かべてしまいますが、
JPCMで作っているのは「粉体塗料」と呼ばれる塗料です。



これは、プラスティック製の樹脂を粉状にして噴霧し、
180度の温度で溶解して、固着させるというタイプのものです。

液体の塗料と異なり、表面に厚く塗布することができるので、
自動販売機やガードレールなど、屋外に置くものに塗装されることが多いそうです。

ところで、JPCMが朝来市に工場を作った理由は何があったのでしょうか?
実を言うと、これが今回の訪問の大きな問いでした。

交通の便が重要な要因だと考えていたのですが…
この答えについては少々意外でした…。

JPCM兵庫工場では大日本塗料や久保孝ペイント、関西ペイントの製品を製造していて、
この工場で製造された塗料は大阪の倉庫へと運ばれて、在庫として管理されます。

そのため、予め計画された通りに製造するのが原則で、
製造した塗料が倉庫から出荷されるまでは、比較的時間に余裕があるそうです。

むしろ、重要となるのは、交通の便という要素ではなく、
塗料表面の樹脂が熱で軟化してお互いにくっつくことがないよう、
「気温」が大きな要素であったようです。

そして、その「気温」という要素でさえも、
必ずしも決定的とまでは言えないようです。

実は、この話は他の企業の方々からも聞いて驚いたのですが、
工業団地への立地には必ずしも特定地域に固執しないようなのです。

つまり、ある一定の条件さえ揃えば、どこでも良い…かもれないのです。
そこで重要となるのは自治体のサポート体制にあるそうです。

工業集積の話となると、ついつい、抽象的なモデルとして考えてしまいますが、
実際には企業誘致には自治体と企業との信頼が大きな「鍵」だったようです。

今回の訪問を通しては、色々と新しい学びを得ることがありました。
お話をしてくださった、JPCM兵庫工場の宇都さんには本当に感謝です!!



もしも、皆さんが自動販売機を見かけたら、JPCMを思い出してください。
その自動販売機の色は…「但馬で作られた色」…かもしれません。





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